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3.機械論的咬合論の限界

Neuromuscular concept

先述のように歯列の崩壊などによって不正な習慣性咬合位が生じた場合、適正であった下顎位は次第に3次元的に偏位し、咀嚼筋と顎関節はその影響を受けます。

このような場合、顎関節と咀嚼筋群も病的な変化を受けていると考えられます。顎関節の円板転移・被薄化や顆頭の骨吸収・添加などの器質的変化が生じているならば、この顆頭位を下顎位診断の基準点にするのは不適切と言えますまた顆頭の僅かな3次元的移動は、歯の接触関係に大きな変化となって現れるため、フェイスボウトランスファー時の誤差は咬合器上での咬合再構築にとって無視できない問題を含んでいると言えます。さらに咬合器自体にも問題があります。例えば低位咬合の治療などで、咬合器上で咬合を挙上する場合、開口初期の顆頭の軸回転(ヒンジアキシスムーブメント)を根拠にインサイザルポールを上げた位置の咬合器上で咬頭嵌合させ補綴物を作製しても、実際の口腔では噛み合いません。咬合器上での開閉口運動は、通常顆頭点を軸に約13cm前方で弧を描くよう作られています。この平均値で決定された距離も問題ですが、図は破線が咬合器のコンダイルを中心とした開閉弧です。実線で示した実際の開閉弧(MKGの誤差を補正したMKG Analyzer モデル86で記録)とでは、大きな誤差が生じてしまいます。

機械論的咬合論の要となる中心位という用語によって定義される顆頭位は、僅かな期間の間に関節窩の後上方から前上方に変更され、現在も様々な表現でいくつもの中心位が存在します。米国歯科補綴学用語集第5版(1987)では、”centric relation”という用語は過渡期にある用語でいずれ廃れる言葉と記載されています。この第5版以降の定義では、顆頭安定位(大石1967)の概念に近づいており、顎関節のX線規格写真撮影による評価法としては適切なものになってきたと言えます。
顎関節は非常にフレキシブルな構造と機能を有し、頭位・姿勢や情動などによる影響が大きく、咬頭嵌合位の変化に順応し骨のリモデリングや、軟組織の不可逆的変化によって下顎位に適応しています。従って、機械的に再現可能な基準点などはありません。下顎位を評価するのに顆頭の固定点からの幾何学的な計測は不可能です。

咬合を論じる上で、機能的咬合系の構成要素の中でも特に咀嚼筋群の機能的バランスを評価することが最も重要であり、咬合を改善するには、咀嚼筋群の機能的バランスを得て生じる筋肉位こそが下顎位を代表する中心と言えます。

言い換えるならば、機械論的咬合論に対し、生理的咬合は、この下顎の中心性(centricity)を如何に評価し、再構築するかが大きな鍵と言えます。
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